良い飲食店とは

良い飲食店とは・・・

「良い飲食店とは・・・」飲食店をどういう立場、視点で評価するかということで変わります。

まずは「経営者・オーナー」「飲食店で働く人」「顧客」というそれぞれの立場があるのですが、今回は「経営者・オーナー」の立場で経営上の視点で考察してみます。

私は現在、規模は小さいが株式会社の経営者の立場にいるので、業態は異なるが同じ経営者の視点で飲食店経営について考えてみました。

昔から、食べ歩きをするのが好きなので、国内や海外出張を機に様々な飲食店で食事をしましたが、果たして良い飲食店とは どういったところだっただろうか。

過去に食事をした 色々な飲食店に思いをはせながら 下記の項目に整理してみました。

【美味しい料理】

京都に「近又」(きんまた)という日本料理店があります。

創業200年を超える老舗料理店で、店舗の町屋は国の登録有形文化財にもなっている建物。店の色々なところに意匠が凝らされており空間自体も魅力がいっぱいです。

しかし なんといっても料理が素晴らしい。
「お椀」の出汁を口に含めた途端。身体の奥から「美味しい」と喜んだ。生まれてこの方、未だかってない経験をする事ができました。料理が人に感動を与え、心から喜ばせることができるのだという事を学んだ一時でした。
【おもてなしの心】

相手の立場に立って心温まる応対をするのが、「おもてなしの心」の原点。

「もてなし」には相手が満足することで、もてなす側も喜びを感じるという関係があり、こうした相互関係は、社会生活のあらゆる場面において基本となります。

東京・江戸川橋に鰻料理の「石ばし」という店があります。

鰻の美味しさもさることながら、鰻料理に合う日本酒のセレクト。器、箸置き、箸、花器、掛け軸と細部にいたるまで御主人の神経が行き届いています。

そして絶妙なタイミングで食事が出されてきます。

昨今の飲食店のホール係り(ウェーター、ギャルソン)はアルバイトが多く、その専門教育が行き届かない為に、食事を出す順番や、食器を下げるタイミング=間合いが取れていないところが多くてがっかりすることが多いです。

【物語性のある空間】

東京高尾に「うかい鳥山」という炭火焼の店があります。

都内から高速道路で一時間余り。高尾の中心部から離れた山あいに、古い民家を移築して合掌造りの集落となし、ひとつひとつの民家が個室となっています。集落に沿って川のせせらぎがあり、青もみじ、蛍の夕べ、紅葉と季節ごとに個室から眺めることができる別世界のような空間が広がっています。

食事も新鮮な鶏肉(自社農場)を始め、料理は出汁が美味しく総じてレベルも高い。又、おもてなしもきっちりしているが、特に空間について特筆しておきたいと思います。

日々の仕事や生活に疲れ始めてきた30代の人達に「ここに来ると心が和む」「すっきりした」と とりわけ好評で、何かの集まりごとに「うかい鳥山」というリクエストがあります。

物語性のある空間、コンセプトの明快な空間は 客の心に強烈な印象を焼き付けます。

【継続性】

見知らぬ街で食事を取るときは、比較的タクシーの運転手から情報を得たり、ネットで検索したりしますが、その時の店舗選択の目安として、開店からある程度年月が経過した店にしています。

どのような仕事であれ継続的に営んでいくためには、新規の客ばかりではなく、リピーターがどれだけいるかということが経営の存続に左右します。

継続の為には、一定の利潤は必要だし、経費のバランス等も重要なのは言うまでもありませんが、経営の維持のためにと短絡的に材料原価の圧縮、人件費の抑制を図ると店舗全体のバランスが崩れることがあります。客はそのバランスの変化に対して敏感です。

【まとめ】

記憶に残る飲食店と思い浮かべてみると、「良い飲食店」はどの店も「美味しい料理」「おもてなしの心」「物語性のある空間」「継続性」といった視点のバランスが良いことに気がつきました。

料理が美味しいと聞き行ってみたら、接客がぞんざいで不潔な店内に興ざめしたり、新しくても掃除が行き届かない店にがっかりしたり。料理は美味しいのだろうけど主人の横柄な態度に気分を害したりと。人生も長いと色々な経験をしてきました。

必要なのは経営者が、店の細部に渡って神経を行き届かせることではないでしょうか。

また、料理価格の多寡によって店のランクが決まるわけではありません。市井の人達が食べやすい価格帯でも、丁寧な仕事をしている「良い飲食店」は多くあります。

つまるところ「良い飲食店とは」 また行きたくなる店です。

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